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コーディネーターという役割
>>伊藤 登
プランナー、デザイナーとして、ひとりでできるものとできないものがある。人と人、組織と組織、人と組織を繋ぐこと、それはプランニングネットワークという社名に関わる当社にとってきわめて重要な関心事である。
プロジェクト推進の原動力−意識の共有化
計画や設計は、地域や都市、地区、空間や施設を形づくる行為であり、時として運営組織等の仕組みを作る行為でもある。直接的な成果は、レポートや図面、模型として表すものの、それらをつくることが目的でないことは自明である。そのために、「ひとりよがりの計画ではないか、フィージビリティがあるか」と常に自問自答する。その繰り返しの10年であったと思う。
そして、我々のまわりには、常に多くの人々の姿があった。スタディをしている時も、計画や設計が実現化した後にもである。そして、これら多くの関係者の協力なくして、計画や設計の目標達成は困難であったことを今更ながらに実感させられるのである。
たとえば、街路の設計ならば、舗装や植栽、ファニチャー等の図面を書けばそれでよしとはならないだろう。そこでは、沿道の店主の意向、ガス、水道、電力事業者の意向、警察の意向など、さまざまな関係者が良い街をつくるためにそれぞれが何を協力すべきかについての意識を共有することが求められる。そして何よりも、そこを利用する歩行者をもて |
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なすことの大切さへの共通の思いが求められるのである。
立場や年齢、性別等、各々の属性が異なる、これらの関係する人々の意識の共有化こそが息の長いまちづくりや前例のないプロジェクトの実現を支えるのである。我々のプロジェクトとの関わり方は、この点に力点を置いてきた。
阿武隈川水系ふるさとの川荒川整備計画の策定(平成8年度)や印旛村都市マスタープランの策定(平成10〜11年度)、掛川市緑の精神回廊構想における行動計画の策定(平成11年度)などにおいて我々が提案し実施した住民ワークショップは、住民と行政、住民相互、行政間の意識の共有化を目的としたものである。これらは、地に足のついた計画とする上できわめて効果的であると同時に、感動的でさえあった。なぜなら、互いを理解し、目標像を共有化することの喜びを皆が分かち合えたからである。
コラボレーションが生み出す意識の共有化と創造性
我々は、意識の共有化プロセスを通常コラボレーション(協働)によって実現する。社の内外を問わずである。どんなに丹念に、そして精緻に調べ上げても地域の人々の心までを掴み取ることはできないからである。地域や地区の過去を振り返り、現在を見つめ直し、将来を語り合う。時には、図面に自らの思いを記すという作業を共有化することで、はじめて地域や地区を、そして、他の人々の思いを知ることとなる。地元の中学生が地域の特徴を調べ、カルタを作り、遊ぶ中で地域の姿を学んだ印旛村都市マスタープランの策定などは、その端的な例である。このようなプロセスをとることで、子供たちは地域を学び取り、大人は目先の利害を超えて、真摯に将来のまちの姿を考えることとなる。
コラボレーションのもうひとつの姿がある。先に示した街路の設計の例では、その街路に関わる関係者がそれぞれに協働する必要があったが、対象はあくまでも街路である。しかし、対象を複数包含しているプロジェクトも存在する。
ダム地域整備や新都市開発などである。ダム地域整備では、ダム本体、道路、橋梁、河川などの土木の各分野、地域振興などの分野をその裾野に有する。これらはそれぞれに専門特化した分野であり、それぞれの専門的観点からの設計がなされるが、それで美しく豊かなダム地域が創造できるという保証は無い。トータリティが欠如する可能性があるからである。
平成4年度から続く苫田ダムに関連する一連のプロジェクトの特徴は、まさに橋梁や道路などの専門家とのコラボレーションにある。我々の役割は、自らも周辺整備や湖岸や植栽のデザインを行い |
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つつ、それぞれの専門家の間に入り、全体の目標像、全体計画に照らし合わせながら、トータリティを保つための調整を図っていくというものであった。それは、プロ同士が互いの能力をぶつけ合う刺激的な仕事であったが、その一方で、相互の信頼関係とコーディネート能力が欠かせないことを痛感したのである。
コーディネーターとしての役割を意識して
新しい車両用防護柵のデザイン検討(建設省東北地方建設局:平成8〜12年度)は、行政に加えて景観、構造、デザイン、交通安全の専門家、メーカーが結集した稀有な製品開発プロジェクトである。
基本デザインを委員のひとりである大野美代子氏が担当したこのプロジェクトの当社の役割は、まさに全体のコーディネーションにあった。意匠登録、メーカーによる技術提案コンペの開催運営、試作品による衝突実験、試験施工、標準規格化という一連の流れのコーディネーション、デザインと開発、デザインと機能との調整が我々に課せられた課題であった。そして、デザインに優れ、コスト面でも比較的低廉なB種対応の新車両用防護柵を世に送り出すことができたのである。
このような製品開発はもとより、住民参加が時代の潮流となった地域づくり、川づくりでも、皆が意識を共有し、協力し合うことがプロジェクト実現の根底にある。我々は、プランナー、デザイナーという本来の職能を活かしながら、コーディネーターとしての役割を意識しながら次の10年を歩みたい。
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様々な分野の広がりをもつダム地域の整備計画づくりは、
コーディネート能力を遺憾なく発揮できるプロジェクトである
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ワークショップは、人を知り、地域を知る格好の機会である
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新車両用防護柵
技術提案コンペ、実車衝突実験等を経て
標準規格品として現在普及しつつある
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